Claude Managed Agentsの検証結果と課題
執筆者
ECU Tech Blog編集部
はじめに
ECUでは、社内やクライアント向けに、バックオフィス自動化やデータ分析などのLLMタスクを実行する基盤を自前で運用しています。
2026年4月に Anthropic から Claude Managed Agents がパブリックベータとして公開されたため、この自前基盤の代替になり得るか検証しました。Managed Agents はエージェントループや実行環境をマネージドで提供しており、自前で用意する部分をかなり減らせます。
結論から言うと、今回は採用を見送りました。導入の手軽さには魅力を感じましたが、実行基盤とモデルを分けて選べず、Claude 固定になる点が私たちの要件に合わなかったためです。
実際に試して分かったこと
検証では、帳票を読ませて構造化する処理と、Web を横断して情報を集める調査処理を載せました。セッションを作ればサンドボックスが立ち上がり、エージェントループを一行も書かずに動作確認まで進められます。ただし、すぐに使いこなせたわけではありません。Agent(バージョン管理される設定)・Environment(実行環境)・Session(実行単位)の関係や、認証情報をサンドボックスに置かず外向き通信の時点で差し込む Vault の扱いなど、Managed Agents 独自の概念が多く、何がどうできるのかを調べるところから始めました。
コストを抑えようと軽量グレードの Haiku から試しましたが、当時はツールをうまく使ってくれず、処理が安定しませんでした。Sonnet に引き上げるとようやく実用的に動くようになったものの、今度は1回あたりの実行コストが跳ね上がります。処理するデータ量にもよるため厳密な数字は出せませんが、当社で想定していた件数を継続処理するには、許容できるコストに収まりませんでした。
採用を見送った理由:モデルを切り替えられない
Managed Agents の料金は、モデルトークンが通常のAPI定価、セッション稼働が1時間あたり$0.08(実行中のみ課金)です(公式料金ページ)。基盤料金はごくわずかで、コストのほぼすべてはモデルトークンが占めます。前述のとおり今回のワークロードでは Sonnet まで上げる必要があったため、このモデルトークン費が想定件数に対して合いませんでした。
ただ、見送りの決め手はコストそのものではありません。ECUでは用途ごとに複数のモデルを比較しながら使っており、新しいモデルが出たときに同じワークロードで試し、価格や性能に応じて切り替えることを重視しています。Managed Agents で動くのは Claude のみで、この運用ができません。当時、モデルの応答品質の変動が話題になっていたことも、単一ベンダー固定への不安を後押ししました。
基盤選定の2軸:ハーネスの運用主体 × モデルの選択権
かつて実行基盤は、オープンソースのフレームワークを組み合わせて自分で作るしかありませんでした。この数ヶ月で Google、Cloudflare、LangChain などから基盤が相次いで登場し、自分で作るものから選ぶものに変わりつつあります。
選ぶ軸は2つ。ハーネスの運用を誰が担うか、そしてモデルの選択権をどこに残すかです。この2軸に、私たちが多用するスケジュール実行と料金を添えて比較します。
| ハーネスの運用 | サンドボックス | モデルの選択 | スケジュール実行 | 料金の主な内訳 | |
|---|---|---|---|---|---|
| Claude Managed Agents | Anthropic | Anthropic 提供(セルフホスト可) | ベンダー固定(Claude のみ) | あり(cron) | トークン定価 + $0.08/時 |
| Gemini Enterprise Agent Platform(Agent Runtime) | 自社(ADK 等で実装) | Google のマネージドランタイム | 任意 | 標準機能としては未確認 | コンピュート従量(vCPU・メモリの時間課金)ほか |
| Cloudflare OS | 自社(ループ自体は OS が内包) | Dynamic Worker によるインスタンス単位の分離 | 任意(AI Gateway 経由) | あり(スケジュール・イベント起動) | Cloudflare 各サービスの利用料(本体は OSS) |
| 完全自前 | 自社 | 自社 | 任意 | 自社で実装 | インフラ実費 |
Cloudflareを選んだ理由
私たちは Cloudflare を中心に据える方針を選び、移行を進めています。必須条件は、モデルの選択権を手元に残すこと。この時点で Managed Agents は外れ、Google と Cloudflare が候補に残りました。Google も候補でしたが、ECU ではすでに Cloudflare をインフラ基盤として使っています。運用できるメンバーもいるため、新しい基盤を増やすより Cloudflare に寄せるほうが現実的だと判断しました。ちょうど Cloudflare OS(エージェントループを内包した OSS の実行基盤)が公開されたタイミングだったことも後押しになりました。
まとめ
今回は、モデルを切り替えられることと、社内ですでに運用経験があることを重視して Cloudflare を選びました。
一方、インフラ運用に人を割けないチームであれば、エージェントループや実行環境まで提供される Managed Agents のほうが合理的だと思います。基盤選定では、機能だけでなく「自分たちでどこまで運用するか」を先に決めておくことが重要だと感じました。