Webサービスの操作主体がAIに変わる中で、サービス提供者に求められること
執筆者
小手川周平 CEO
2026年に入り、AIによるブラウザ操作の質もスピードも向上し、実作業で用いることができるタスクが多くなってきた。
GoogleはChromeにauto browseを導入し、OpenAIもChatGPT WorkでCloud Browserの提供を開始した。Webページの閲覧だけでなく、ボタンのクリックやフォーム入力、ログイン済みサービス上での操作までAIに任せられる。
最近では、(セキュリティの懸念も表面化しつつあるものの)メールやカレンダー、メッセージなどに接続し、予約や買い物、メール処理まで行うAIエージェントInstinctも話題になった。
サービスを触る主体が人間からAIにシフトしていく中で、サービスプロバイダーとして求められることも少しずつ変化していくだろう。
個人的にはNotionの時代への食らいつき方が好きなので、そのあたりも紹介しながら書いていければと思う。
AIにとっての使いやすさとは
AIがサービスを操作するというのは大きくこのようなパターンがある。
- AIが直接ブラウザやアプリを操作する
- MCPなど、エージェント向けに提供されたToolを使う
- Public APIなど既存のシステム向けインターフェースを使う
作業者がAIにシフトしていく中で、上記のような操作がしやすいサービスが今後選ばれやすく、リプレイスされにくくなっていくだろう。
AIにとってもアクセシビリティは重要
AIが直接ブラウザやアプリを動かしてサービスを操作する場合、サービスのアクセシビリティが改めて重要になる。つまり
- 構成要素が正しく構造化されている
- 構成要素にしっかりと意味づけされたラベルがついている
- 入力・操作方法を限定しすぎない
などといった幅広い属性の人間にとっても重要なことが、AIにとっても重要になると言えるだろう。
サービス外からAIが操作しやすくするためのAPI + MCP + α
外部のAIエージェントが、APIやMCPを通じてサービス内のデータを参照・更新するケースも増えていく。例えば大量のデータをインポートしたり、再現性のある定常作業を外部システムと絡ませながら構築したりという目的においては、サービスを直接触るのがベストではないシーンが多くなる。
そのため、エージェントが操作しやすいWeb UIを整備するだけでは十分ではない。
SaaSベンダーが公式MCPサーバーを提供するのは、わかりやすい対応の一つだ。ただし、MCPを用意すればエージェントからできることが自動的に増えるわけではない。MCPサーバーを既存のPublic APIをベースに実装するのであれば、APIで提供していない操作は基本的にMCPからも実行できない。
NotionのMCPも、当初はPublic APIのエンドポイントをほぼ1対1でMCP Toolに変換する構成だった。しかしNotion自身、この方式ではエージェントにとって機能や使い勝手に制約があったとして、その後はPublic APIをそのまま公開するのではなく、エージェント向けに最適化したToolをHosted MCPから提供する方向へ進化させている。
参考: Notion’s hosted MCP server: An inside look
公式MCPが出た当初、Notion内データベース操作などPublic APIの不足によってMCP経由では難しかった操作が多かった印象を持っていたが、現在は操作可能な範囲が大きく広がっている(同時にPublic APIのエンドポイントもかなり増えている)。
コスト・再現性という課題
すべての処理をMCP経由でAIエージェントに任せるのもコストや再現性の点から課題がある。例えば「毎晩、CRMから特定条件の顧客を取得してNotionに同期する」といった処理では、毎回LLMに何をするか判断させるより、決められたコードを同じ手順で実行した方が速く、安く、結果も安定する。
Notionもこの違いを意識しており、MCPとは別にWorkersという仕組みを提供している。MCPがAIエージェントに外部サービスを操作するための道具を渡す仕組みだとすれば、Workersは決められた処理をコードとして確実に実行するための仕組みだ。
参考: Introducing Notion’s developer platform
状況に応じた判断が必要な仕事はエージェントとMCP、毎回同じ結果が求められる処理はコードとして固定する。Notion自身もこの2つを使い分ける方向に進んでいる。
結局、「AI時代だからすべてをMCPにする」「APIを捨ててブラウザエージェントに操作させる」という話ではない。用途や目的に応じて最適な道筋を用意しておくのがサービスプロバイダーの責務で、その範囲はもうUI/UXやアクセシビリティだけでは完結しなくなってくるのだと思う。
まとめ
東京から大阪に行きたいとGoogle マップに伝えたときに、電車や新幹線、徒歩などのルートを組み合わせてサジェストしてくれるように、人間の仕事の中心も目的地を考えることになっていくはず。サービスユーザーもプロバイダーも、どうやるかよりも何をするかに視点が切り替わっていくように思う。
ただし目的地に辿り着きやすくなるように道路や線路を整えるという国の仕事があるように、適切にAPIやMCPを整備したりサービスのアクセシビリティを高めるのがサービスプロバイダーの仕事になるのではないだろうか。